私事 -SIGOTO-

自分のアップデートの記録

湘南最後の蔵元🍶熊澤酒造さん

始発に近い電車に乗り新幹線にのり、在来線を乗り継いで辿り着いた先は湘南。

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(初めて新幹線の中から富士山を見た)

 

自分の中では、湘南はもっと気軽に行けそうな都会だと思っていた。
確かに電車もあるし、交通機関があるだけ十分だ(場所によっては交通機関が全くなく、車しか手段がない場所もある)

ただ、“湘南”は子供の時に見ていたスラムダンクや夏の海水浴場のイメージが強かったから勝手なギャップがあった。

朝10時。
在来線が大体30分に1本。
最寄りの香川駅から徒歩7、8分。

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住宅地と農地が混ぜ合わさった道を歩いて進んだ先に突然広い駐車場が現れた。

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その向かい側にある、蔵。
外から見ると、ちょっとしたテーマパーク。

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案内をしてくださったのは杜氏の五十嵐哲朗さん(湘南ご出身)

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1996年。日本酒の蔵だけど、日本酒を造らない時期に造れるビールを醸造するようになったのが、五十嵐さんが入社された頃からだった。

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当時はまだ冬に農業が出来ずに出稼ぎも兼ねてお酒作りに来られていた農家さんが中心。
当時、越後杜氏さんだったが、ビールの醸造を始めた蔵に、なかなか厳しかった。
五十嵐さんが入社した頃に阪神大震災があり、その影響で白鹿など丹波杜氏さんが来られるようになる。その方のもとで5年ほど修行をした。


ビールは全て輸入品で造っている。
日本産に拘りがあるかどうか気になり尋ねた。
国産は大手メーカーさんが押さえており、農家さんも足元を見る。そこに大金をつぎ込むよりも、他のところにかけた方が良いと判断されたそうだ。
国産至上主義派はいるだろうが、良いものを作るために八方美人にならないということを決断されたところに覚悟を感じた。

 

ビールは大手のようにコンサルしてもらったりレシピを貰って作ると他と同じようになってしまう。

それだと自分たちが作る意味はない。どうすればいいのか?
技術を自分たちが身につけて自分たちで考えて作れるようになることが大切だと気づく。
ドイツのマイスターを蔵へ呼んだ。
ドイツマイスターたちはドイツ語しか話せなかった。“一緒に”造りながら教わる事となる。

 

 

日本酒の蔵もコンパクトさを生かした。
平面だとものを運んで持ち上げたり下ろしたりするのに体に負荷がかかることから1999年に改装。平面だった蔵を中二階建にした。

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現在ビールは230kl、日本酒は800石。
日本酒醸造メンバー6人
瓶詰め等諸所3人
ビール醸造メンバー3人
計12人での製造メンバー。現在は男性のみ。
女性はNGでは無いが、昔ながらの設備の点も多く体力仕事が大半。

ビール醸造と日本酒醸造のメンバーははっきり分かれてるのか、どちらもするのかをお尋ねしたところ、一応分かれているが忙しい時は双方手伝う事があるため、どちらもしたいと思ってもらえないと働いてて食い違いが生まれるため、入社時点で聞くとのことでした。

どっちも学べれるなんて得だと思うものの、意外とそうでは無い人が多いとの事。

 

最近は普通に耳にすることが多くなった“地域産”
この蔵がある茅ヶ崎地域で取れたお米を使った日本酒を作るのにも、地域の貢献にもなる。
田舎ではあるけれど、農業地ではない。
米を作るのに適しておらず、水田を手放す農家も出てくる。そうなると水田が機能しなくなり、災害対策として水田が役に立たなくなる。
水田はクッション機能だ。

地方の蔵元のように、自分たちで全て作るというのが、“場所”がそれを困難にさせる。
困難な中、可能な限り地域のものに拘る。

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河童マークはその表れだった。
事務所の応接スペースには、ビールや日本酒の瓶と共に河童の胴体の標本(?)が飾られている。

 

仕込み水は丹沢経由の中硬水。
昔沿岸だったことからミネラルが豊富だ。

年に一本だけ山廃の日本酒を醸している。
防空壕が敷地内裏山にあり、その中で十ヶ月くらい常温で保存している。

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防空壕の中に入るのが初めてでドキドキした。
防空壕といっても地上だ。洞穴を掘ってというタイプで地下では無いにも関わらず、電波通っていなくて圏外だった!

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この防空壕を広げて補強する工事の真っ最中だった。完成目処を尋ねたら「わからない」と返ってきた。
なんでも大工さんが雨の日に作業したいというのをOkしたら、あまり進まない状況になったそうだ🤣

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立派な煙突が真ん中にそびえ立っている。
使用されておらず、撤去するのと補強するので金額を聞いたらほぼ同額。
それならば酒蔵らしくシンボル(景観)として補強し残すことに。

案内を一通りしてもらい、時刻は大体正午になった。

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蔵の敷地内はギャラリー、レストラン、パン屋にカフェとぐるっとお店がある。
平日のお昼とは思えないぐらい、お客さんが来ていて賑わっていた。
いつもこうなのかと思い尋ねたら、昼間だけですよと仰ってらしたものの、それでもすごい人だと思う。
敷地外にあった広大な駐車場も車がずらっと停まり埋まっていた。
場所としては湘南。観光のお客さんも多いのかと思うのだが、意外とそうでは無いらしい。
鎌倉・江ノ島側でもないところ。
在来線の乗り継ぎが悪いことから観光の方は少ないそうだ。
ということは地元のお客さんが中心で、こんなにも賑わっている。
地域の人が必要としている場所。
昔は一つの町に一つ蔵元があったと言われていたらしいが、その話が急に頭に浮かんだ。

地域に愛されて、必要とされて、残った蔵。
湘南最後の蔵元は、地域の人たちに支えられて、そして地域の人たちに喜んでもらえるようにと働く人も考えている蔵だった。